小学生から学ぶ

私は小学校のスクールカウンセラーの仕事もしています。小学生の子ども達や学校現場に身を置くことは、大人の方のカウンセリングをする上で本当に役に立つ体験です。

 

 先日、こんなことがありました。1年生の体育の時間です。1年生でもマット運動の準備、片付けを子ども達で行います。片付けの時、先生は最初に「自分達が持ってきたマットを片付けて下さい」と指示しました。そして、4枚のマットをそれぞれ順番に名前を言われたメンバーで片付けていきます。「次、〇〇さんと〇〇さんと〇〇さんと〇〇さん片付けて」と4名の名が呼ばれます。見ると、3人でマットを運んでおり、少し離れたところで男の子が立ち往生していました。尋ねると「さっき黄色のマットを用意したけど・・・んー・・・」と困り果てています。あーそうだったのか、そういうことだったのか、それではさぞかし困るだろう、ととても納得がいきました。先生の最初の指示は、「準備したマットを片付けて」しかしどこかで順番が入れ替わって、片付けるマットは黄色くありません。その2つの異なる指示の間で、文字通り立ち往生していたのです。その時点で理由を知らない先生は、当然のことながら「〇〇くん、どうしてやらないの!!」と遠くから叱りました。その男の子は不本意そうな顔で、しかしちゃんと白いマット運びに加わりました。もちろんスクールカウンセラーの仕事として私は後で先生にその事情を話し、先生とその子についてより理解を深め合うことが出来ました。

 相談室で、仕事の優先順位が付けられなくて上手くいかない、上手く上司の指示に従えない、ということでお困りになって来談される方が多くいらっしゃいます。それをきっかけに、仕事全般に対し、そしてご自分自身に対しすっかり自信を失っておられることも多々あります。しかし、優先順位が付けられない、指示に従えないという行動の影には、実はそれぞれの状況のなかでのそれぞれの”事情”があるのではないでしょうか。先の男の子のように、「あれ、さっきはああ言われてたんだけどなあ」。そんなことは気にせず、ぱっと言われたら動ける人を一般的には”融通が利く”というでしょうか。行動の背景にあるそれぞれの事情(これを思考と言ったり認知と言ったり特性と言ったりもできるかもしれませんが)を理解することで、やりやすくなることが多いかもしれません。                                    (高梨)