学校再開にむけて〜子ども達の「こころ」

 緊急事態宣言が解除され、世の中が動き出しました。3月から休校となっていた学校が、首都圏でもいよいよ再開されます。子どもたちも、親も、先生もこれまで経験したことのない、3ヶ月余りに渡るお休みでした。家にいる子ども達は、この間何をどう体験していたでしょう。そして子どもを抱える家族は、どうだったでしょうか。

 大人以上に子供にとって、この休校という環境の大変化の影響はとても大きいものです。一見すると、学校がなく家で暇を持て余してゲームや動画に時間を費やし、時々学校の宿題をやって、とのんびりマイペースな生活を送っているように見えることも多いでしょう。しかしその行動の背後の「こころ」には、様々な不安を抱えてもいます。大きな生活の変化に「こころ」がついていくだけでもとてもエネルギーが必要です。生活リズムが変化し、時間感覚がずれ、体も心もそれに懸命に慣れようとします。その中で、感染の不安、友達と関われない不安、勉強の不安、家族との関わりにおける不安、この先どうなるのかについての不安…子どもなりに自覚せずともそのような不安を抱えています。そのために、いつもに増してわがままだったりイライラしたり、やる気のない態度となっている子どもも多いかと思います。大人もまた、実は大きな環境変化でストレスを抱えている上に、家で過ごす時間が増えて家族同士の関わりが増し、良いことだけでなくぶつかることも多くなるのも当然です。

 

 そして今世の中が前に動き出す時、大事なことは「こころ」を置いてけぼりにしないことです。これまでの遅れをどう取り戻すか、新しい生活様式にいかに慣れていくか、前に前にという気持ちで一杯になります。前に進むことは大事なことですが、しっかりと地に足をつけて前に進むためには、自分の足跡を確認して進むことが必要です。それは、足元を眺め、少し足跡を振り返り、この3ヶ月の体験は自分にとってどんなものだったのだろうと思いをめぐらせてみることです。自分に「起きたこと」を「経験する」ということです。ついつい大人は、心配するあまり、「さあ、これからどうするの」と始めてしまいがちです。けれどその前に少しだけ、思いをめぐらせてみてください。子どもは自分だけでするのは難しいので、こうだったね、ああだったね、と大人が会話の中で手助けしてあげるといいと思います。その時に、楽しかったことだけでなく、ついつい喧嘩が多くなっちゃったね、勉強しようと思っても家だと難しかったね、など、を振り返れることがとても大事だと思います。言葉にする、というのは「起きたこと」を「経験する」に変えてくれる力があります。経験が増えると、生きる知恵が増します。

 

 前へ進んでいく今、しっかりと「こころ」と手を繋いで、足跡を振り返りながら一歩一歩を重ねてゆきたいものです。